【トルコグルメ】パリパリの「ラフマジュン」と未体験のカブジュースに圧倒された話

アジアの西端とヨーロッパの東端に跨るトルコ共和国。
地理的にも離れている中央アジアとトルコは接点が無いように見えて、実はトルコ人は何世紀も前に中央アジアからアナトリア半島(今のトルコ共和国の位置)に西進してきたという歴史があるそうです。つまり、中央アジアとトルコはある意味でパラレルワールド…という訳でトルコについても少し触れてみようと思います。

かつてのオスマン帝国君主が住んだ「ドルマバフチェ宮殿」からボスポラス海峡を臨む図

さて、中央アジアがそうであるように、トルコでは薄焼きパン(フラッドブレッド)、肉、チーズを始めとする乳製品が非常に盛んに消費されています。これらを組み合わせると何ができるか…そう、ピザですね(強引)

ということで、トルコ滞在中に出会ったトルコ風薄焼きピザ・ラフマジュンについて紹介します!
※当記事の情報は2023年当時のものです。トルコリラ=円換算は目安です

トルコ風ピザ「ラフマジュン」について

今回紹介するラフマジュン(Lahmacun)とは、薄いパン生地にひき肉やみじん切りの野菜などを乗せて、窯で焼いた料理です。
この見た目から「トルコ風ピザ」なんて呼ばれたりすることもあるようです。確かにピザっぽいですね。

This image was taken by Kenneth Jorgensen (gallery).Please attribute this image with “Kenneth Jorgensen”.An email would also be appreciated., CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

とは言っても、一般的なラフマジュンにはチーズが入っていなかったり、薄い生地をパリパリに焼き上げたりするそうなので、その点では一般的なピザと異なります。

起源はアラビア半島、特に北西部である今のシリア、レバノン、ヨルダンあたりで親しまれてきた料理らしく、トルコ語の「ラフマジュン」という名前も、アラビア語で「肉がトッピングされた生地」を表す“ラフム・ビ・アジン”の短縮形“ラフム・アジン”(لحم عجين)から来ているそうです。

トルコ国内では、アラビア半島と近い東南部を中心に広く食べられてきたようですが、20世紀後半くらいからは全国的にポピュラーな料理になってきたようです。

ちなみに「トルコ風ピザ」と言えば、ピデ(トルコ語ではイチリ・ピデ:İçli pideと呼ぶ)という似て非なる料理があり、こちらは日本国内のトルコレストランで見ることができます。(こっちの方がピザに似てます)

E4024, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

兎にも角にも、トルコ風のピザを食べてみたい…!そんな思いから、トルコはイスタンブールまで飛んでラフマジュンのお店に突撃してみました!

イスタンブールのカドゥキョイ地区で味わう極上ラフマジュン

今回ラフマジュン・ハンティングのために選定したお店はBorsam Taşfırın(ボルサム・タシフルン)という名前で、イスタンブールのアジア側、旧市街地の対岸に位置するカドゥキョイ地区にあります。

アジア側の繁華街となるカドゥキョイ地区は、ヨーロッパ側のイスティクラル通り(新市街地)やスルタンアフメト地区(旧市街地)と同様に沢山の人でごった返す繁華街です。しかしこれらの地区と異なるのは、カドゥキョイには地元的な雰囲気が充満しているという点です。
観光地特有のギラギラ的な感じや、観光客からぼったくろうみたいな空気は感じませんでした。(あくまでも個人的な意見)

UMIT
UMIT

無理やり東京で例えるならば、イスティクラル通りは銀座、スルタンアフメト地区は浅草、カドゥキョイ地区は新宿と言ったところでしょうか…

外国人ではなく、トルコ人が集まるエリアとなれば飲食店も期待できそうだ…ということで、カドゥキョイのフェリーターミナルから徒歩10分ほどの場所にある飲食店がひしめくエリアを物色していると、その一角に現れるのがこのお店。

ちなみに、店名の“タシフルン”とはトルコ語で、タシュ(Taş:石)+フルン(Fırın:窯)、つまり石窯のことですので、ラフマジュンやピデを石窯で焼きまくる店であろうことが想像できます。さらに期待が高まるというものです。

お店はテラス席というか、店の外側を囲うようにカウンター席が設けられ、まるでおでんとかラーメンの屋台のようです。イスタンブールの街並みは基本的にはヨーロッパ風に作られているように見えますが、このような屋台風カウンター席を見ると、やっぱりイスタンブールはヨーロッパ文化圏ではないんだ、ということが感じられます。
着席して注文すると、ほどなくしてラフマジュンが着弾しました。

届いた熱々のラフマジュンは意外と大きくて、日本の宅配ピザチェーン店のMサイズピザくらいはありました。ただ、前述のように記事は薄いので、ひとりで全部いただけちゃいます。
同席したトルコ人曰く、卓上のレモンを絞り、パセリ(イタリアンパセリ)の葉をちぎって乗せ、パリパリの生地を折り畳むようにしていただくのが“通”な食べ方のようです。

試してみるとなるほど味が引き締まって美味しい!羊?のひき肉の風味がほんのりと良い塩梅で、正直2枚くらいは余裕で食べれそうだなあなんて思っちゃいました!

未体験のカブジュース「シャルガム」について

ラフマジュンに舌鼓を打ちながら、一緒にいただく飲料を頼もうとしたところ、メニューにシャルガム(Şalgam)なるものを発見。トルコ人に聞くと、カブのジュース(!)とのことで、早速注文。
日本にはトマトジュースや人参ジュース等ありますが、カブのジュースは聞いたことが無かったのでそのお味が気になりました。

注文時、「アジュル?(Acılı=辛い) アジュスズ?(Acısız=辛くない)」と聞かれたので、とりあえず辛くない方を選択。

出されたペットボトル入りのジュースはかなり濃い赤色で、何も知らなければブドウとかザクロのジュースのように見えます。

お味は…酸っぱくて、しょっぱくて、ほんのり辛い!!というなかなか未体験かつ強烈な味(個人の感想)でした。
中央アジアから東欧にかけては、しょっぱいヨーグルト飲料や、麦の発酵飲料など、日本人の味覚的に評価が分かれると言われる飲み物が沢山あると言われていますが、私はそれらについては全て美味しくいただけるという自負がありました。…あったのですが、このシャルガムに関してはなかなか刺激的な味でしたね…

なお、シャルガムとはトルコ語でカブそのものを指すため、カブジュースの方を区別するためにシャルガム・スユ(Şalgam suyu)とも呼ばれるようです。

UMIT
UMIT

“シャルガム”という単語自体は同音のペルシャ語“شلغم”からの借用語で、“ス(su)”とはトルコ語で「水」や「汁」なをさします。“Şalgam suyu”は直訳すると「カブ汁」となりますが、日本語だと味噌汁みたいなニュアンスになっちゃいますね

後からネットで調べてみると、カブだけではなく紫人参が入っていたりするようで、そのほかお酢や唐辛子、塩などが入った発酵飲料のようです。あの酸っぱさやしょっぱさはこうした材料と発酵から来ていたのか…
嗜好品というよりは健康飲料的な口当たりだと感じましたが、トルコでは実際にそういうニュアンスで飲まれることもあるようです。

それにしても何とも形容し難い味だったので、私のボキャブラリーでは伝えきれないのが歯がゆいところ…酸っぱいとか辛いとか表現しましたが、中華やタイ料理のような所謂「酢っぱ辛い」とも違います。
日本における野菜ジュースはトマトジュースやキャロットジュースなど、野菜の味を活かしながら全体としては甘い味付けになっていたり、逆に青汁のように思い切り苦かったりするものが大半なので、このシャルガムの味は完全に私の予想外で、更に似た味のものをいただいたことが無かったので非常に衝撃的でした。

とはいえ、好きな人は好きだろうなあという味でした。私が飲んだのは辛さ抜きだったので、辛いシャルガムはどんな味だったのか、想像すらできませんが…

まとめ(価格など)

今回はラフマジュン1枚とシャルガムのペットボトル1本でしたが、お値段は85トルコリラ(約480円)と、かなり割安でした!
いくら軽食に近いとはいえ、薄焼きピザ1枚とドリンクをプラスして、それを飲食店でいただいてワンコイン以内とは…
ちなみに、トルコは意外と日本に比べても物価がそこまで安くないので、これはお得だなあと思うと同時に、同じイスタンブール中心部でもボスポラス海峡を挟んでアジア側に来るだけで物価が変わるなあと思いました。
トルコに伺う機会があれば、ぜひラフマジュンにトライしてみてください!(好みが分かれそうなシャルガムは自己責任で)

それにしても、ピザ屋が山のようにある日本において、ラフマジュンのようなパリパリ系チーズ無しピザは意外と見当たらないですよね?モチモチな生地がもてはやされる日本で、焼きたてパリパリのラフマジュンを食べさせる専門店が登場したら、意外と流行っちゃうんじゃないか?なんて妄想が捗ります!

イスタンブールのヨーロッパ側とアジア側の移動はボスポラス海峡をフェリーで横断します。チャイを愉しむのも、また一興

コメント

タイトルとURLをコピーしました