リトアニアの伝統料理【キビナイ】を食べながらカライム人に思いを馳せる

ヨーロッパの北東、バルト海沿岸に位置するバルト三国のひとつ・リトアニア

リトアニアと言えば、世界遺産となっている首都ヴィリニュスの街並みのような「如何にもヨーロッパ的」な雰囲気が日本でも人気の旅行先ですが、ユダヤ教を信仰するトルコ系の人々の末裔が住んでいる地域があります。
そこでは彼らの伝統料理を食べることができるらしいということで居てもたってもいられなくなり、行ってくることにしました。

ということで、リトアニアの絶景お城スポット・トラカイで食べた伝統料理キビナイやカライム人についてさっくりとお話します!!!
※当記事の情報は2019年当時のものです。ユーロ=円換算は目安です

トラカイとは?

リトアニア南東部に位置するトラカイ(Trakai)は、まるでドラクエの城と評されるトラカイ城があり、リトアニアの人気観光地のひとつです。

さらに、首都のヴィリニュスからも30kmほどの距離にあるため、日帰りで気軽に行くことができます。

そんなトラカイですが、キビナイと呼ばれるパイのような名物料理があります。

実はこれ、以前からトラカイに住んでいたカライム人というトルコ系の人々の伝統料理のようで、これはリトアニアのヨーロッパ的なイメージからすると少し意外なルーツに思われます。

カライム人とは?

カライム人(リトアニア語:Karaimai、カライム語:Karajlar)と呼ばれる人々の起源については諸説あるらしく、ネット上には色々な文献もあるのでここでは触れません(というか、触れるほどの知識がありません…)が、ざっくりというと、歴史的にウクライナ南端のクリミア半島やポーランド、リトアニアあたりに住んでいた人々のようです。

なんだかんだあって、現在のリトアニアではその殆どがトラカイに住居しているとのことですが、その人数も公式発表によると300人もいないようです。

トラカイの街を歩くと、カライム人様式と言われる三角屋根で三つ窓が特徴的なカラフルな家々が並んでいました

言葉を選ばずに表現してしまうと、ある意味風前の灯火のような規模に見えますが、彼らはキリスト・カトリックが席巻するリトアニアにおいてユダヤ教の一派を信仰し、トルコ系の言語を話すという、興味深い経歴を持っています。

トラカイの街には、文化センターや博物館のような建物や、当時の民族衣装をモチーフとしたモニュメントがあり、自治体としてもこのカライム人文化を保護しようという機運が感じられました。

伝統料理・キビナイとは?

キビナイ(リトアニア語:Kibinai、カライム語:kybynlar)とは、所謂ミートパイのような料理で、トラカイのカライム人の伝統料理です。

恐らく一般的なのはひき肉と玉ねぎの餡が入ったタイプで、私は彼らの祖先である(と思われる)遊牧文化を感じるために(?)、羊肉のミンチをいただきました。

味は…もちろん激ウマ。食べる前から美味しいのは保証されていたようなものですが、その期待を飛び越えてくる激ウマっぷりです。

なんとなく中央アジアのサムサを彷彿とさせる料理でしたが、トルコ系民族ということで、恐らくルーツはそのあたりから来ているのかな、などと想像しながら食べるのもまた乙ですね!

ちなみに、パイだけあってその餡にはバリエーションがあり、牛や豚のミンチのほかにキノコやチーズなど、お店によっては色んな種類をいただけます。
また行く機会があれば、色んなバリエーションのものを食べ比べしてみたいですね!

キビナイを食べたお店について

私はトラカイのキビナイレストランでキビナイを食べてきました。

お店の名前はSenoji Kibininė”(セノイ・キビニネ)、昔のキビナイという感じの意味のお店で、伝統的なカライム料理がいただけそうな雰囲気です。

トラカイ城の近くに位置しており、ロケーションは抜群で、お店も広いです。

ヨーロッパならではの開放的なテラス席が多くあり快適ですが、猫が虎視眈々とおこぼれを狙っています。

前述のマトンキビナイ(kibinas su avina)は2.2ユーロ(約300円)で、一般的な一人用皿の直径くらいの、ちゃんとしたサイズのものが出てきます。

あまり飲んだことが無いものを頼もうと思ってオーダーしたクランベリーのキセリ(Spanguolų kisielius)なるドリンクは0.9ユーロ(120円ほど)。

とろみがあり濃厚なフルーツジュースと言った感じで、美味しかったです。

ちなみに私はキセリなるものを知らなかったのですが、東欧で一般的な飲料のようです。
同じく東欧でポピュラーな飲料であるモルス同様にベリー系の実から作ったジュースのようなものらしいですが、キセリは澱粉等でとろみ付けがされています。

トラカイで出会えるカライム語に思いを馳せる

トラカイの街を歩いていると、複数のキビナイ料理レストランやテイクアウト専門店を見かけることができます。

そのうちのひとつである“KYBYNLAR”というお店を見かけましたが、よく見ると店先のリトアニア語の下にカライム語と思しき言葉が書いてありました。

上段がリトアニア語で下段がカライム語。リトアニア語では”Karaimų tautinių patiekalų restoranas” – カライム伝統料理レストランと書いてありました

転写すると、下記の様に書いてあります。(読み方は予想です)

Jüviu Karaj Ašamachlarnyn

ユウィウ カライ アシャマチラルニン

カライム語については全く分からないのですが、同じトルコ系の言語であるカザフ語(fromカザフスタン)の生後1か月児程度の知識で置き換えてみると、下記のようになるのかな、と思いました。
※カライム語と対比するために、カザフ語はキリル文字ではなく2021年版ラテン文字で記載しています

  • Jüviu → üi(үй) … 家
  • Karaj → Qaraiım(Қарайым) … カライム
  • Ašamachlarnyn → Asşylarnyŋ(Асшыларының) → Аспаздарының … 料理人達の

ということで、この文章は「カライム料理人たちの家」(=カライム料理レストラン)のような意味となり、カザフ語だと下記の通りとなりそうです。(読み方は参考です)

Қарайым Аспаздарының Үйі

カライュム アスパズダリヌィン ウイィ

こうして見ると、「家」に当たる(と思われる)単語の語順が両者で異なるようです。

カザフ語だと、日本語同様「料理人たちの家」の様に「家」という単語が最後に来るのですが、カライム語では最初に来ていますね。

もしかすると英語の「House of Chefs」みたいにヨーロッパ的な語順に変化したのかも知れません。リトアニアへ移動する過程で影響を受けてきたのでしょうか…

やはりリトアニア内のトルコ系民族を祖先に持つ人々だけあって、不思議がいっぱいです!

終わりに

トラカイはそのお城の景観で有名な観光地であり、首都ヴィリニュスからも近いため、日本人の方でも観光で訪れる機会はそれなりにある街だと思います。

もし行かれる場合は、お城観光だけではなく、街並みや伝統料理を味わいながらカライム人の文化に触れてみるのもまた乙ですね。

ちなみに、キビナイはトラカイのみならずリトアニア国内ではポピュラーな食べ物のようで、ヴィリニュスのパン屋でも普通に見かけました。
トラカイに行かれない方でも、もし街中で見かけたら買ってみてはいかがでしょうか!!!!

紹介したレストラン「Senoji Kibininė」では、1テーブルにつき1匹の猫が担当していました

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