アジアの西端とヨーロッパの東端に跨るトルコ共和国。
地理的にも離れている中央アジアとトルコは接点が無いように見えて、実はトルコ人は何世紀も前に中央アジアからアナトリア半島(今のトルコ共和国の位置)に西進してきたという歴史があるそうです。つまり、中央アジアとトルコはある意味でパラレルワールド…という訳でトルコについても少し触れてみようと思います。
この記事は、以前の記事で紹介した、ユスキュダル地区の家庭料理食堂の続きとなります!このお店についての詳細は下記の記事を参照ください!
※当記事の情報は2023年当時のものです。トルコリラ=円換算は目安です
トルコ風ピラフ、ピラウについて
さて、メインだけでなく副菜も紹介しましょう。
プレートの左コーナーを陣取るのはトルコ風ピラフです。見た目的には白米もしくは雑穀米的ですが、これがまた美味いんです。
トルコのピラフはたっぷりのバターで味付けされているため、バター風味がかなり濃厚で、めちゃくちゃ美味いです。日本の白米も美味いですが、こちらは味が付いているのでお茶碗何杯でも行ける気がします。(バターたっぷりと思われるのでカロリーもそれなりでしょうが)
お米に混ざっている茶色いものは、“シェヒリイェ(Şehriye)”と呼ばれるお米のように短いパスタ。トルコではこのようなスタイルのピラフを単に“ピラウ(Pilav)”と呼んだり、もしくはシェヒリイェにちなんで“シェヘリイェリ・ピリンチ・ピラウ(Şehriyeli pirinç pilavı:パスタ入りの米ピラフ)”なんて呼ばれたりするようです。
日本だと完全に主食のお米料理も、トルコだと副菜のひとつみたいな扱いのようですが(あくまでも主食はパン)、だからこその旨すぎる味付けなのかなあなんて思ったりしました。
ちなみに、日本におけるピラフ(Pilaf)は、トルコのピラウ(Pilav)が西洋に入ったものが、西洋経由で日本に伝わってきたという説があるようです。しかしそれも更に遡ると、ウズベキスタンのプロフ(Plov)や中国新疆ウイグル自治区のポロ(Polo)を筆頭とした中央アジアの民だった時代を経て、歴史と共にはるか西へ伝わった、なんて話もあります。ピラフと言えばなんとなく「洋食」のイメージがありますが、がっつりアジアの料理だったのですね…
ウズベキスタンのプロフを実食した際の記事はこちら!ちなみにトルコでは、ウズベキスタンのプロフや中国新疆ウイグル自治区のポロのことを、オズベク・ピラウ(Özbek pilavı)やカシガル・ピラウ(Kaşgar pilavı)、テュルキスタン・ピラウ(Türkistan pilavı)なんて呼んだりするようです
日本では見かけないかも?なアーティチョークについて
この定食の副菜として存在感を放つのが、アーティチョークです。
日本では殆どお目にかからない(少なくとも私は初めて食べました)アーティチョークですが、トルコ語では“エンギナル(Enginar)”と呼ばれ、トルコの友人に聞いたところ、割とメジャーな食材なんだそうな。
アーティチョークのトルコ語Enginarはギリシャ語からの借用語(αγκινάρα:agkinára)なんだそうです。先ほどのロカンタと言い、ヨーロッパ由来の言葉も多いですね
私はアーティチョーク自体を食べたことが無いため、見た目だけだと味や食感が全く想像つかなかったのですが、おそらくオリーブオイルでソテーしてありとても柔らかくて美味。日本で食べる食材だと何に似ているだろう…なんとなく、ホクホク系のじゃがいもとか、ゆり根なんかが似ているかな?なんて思いました。(個人の勝手な感想です)
とにかく、日本ではあまりメジャーではないのが不思議なくらい、とても美味しかったです!
ブドウの葉包み、サルマについて
メインの定食があまりにも激ウマだったので、追加でここぞとばかりに気になるおかずを頼んでしまいました!
向かって手前の細長いものが“ヤプラク・サルマス(Yaprak sarması)”、奥が“バーミヤ・イェメイ(Bamya yemeği)”です。
“ヤプラク・サルマス”とは、「葉っぱ(yaprak)」+「巻くこと(sarma)」の組み合わせなので、日本語で表現すると「葉っぱ巻き」とでも呼ぶのでしょうか。一般的にはこれ系の料理を代表して「サルマ」と呼ばれます。
サルマはお米やひき肉などをブドウの葉っぱで巻いて煮込んだ料理で、クタクタになった葉っぱの食感や、ひき肉の中に混ぜられたお米のモチっとした食感により、ロールキャベツのような、桜餅のような、不思議な食感が味わえます。
更に味付けもなかなか不思議で、甘酸っぱいというか、恐らくシナモンとかそのあたりのスパイスや、果汁なんかが入ってたりするのかな、と予想しますが、とにかく形容し難い…
私は個人的にはバルサミコ酢のような甘酸っぱさが個人的には苦手なのですが、このサルマの甘酸っぱさは大好物でしたよ!
ちなみにこのサルマ、少し調べただけでも、アスマ・ヤプライ・サルマス(Asma yaprağı sarması:ブドウの葉っぱ巻き)、キラズ・ヤプライ・サルマス(Kiraz yaprağı sarması:チェリーの葉っぱ巻き)、ラハナ・サルマス(Lahana sarması :キャベツ巻き)などなど、バリエーションが豊富なことが伺えます。
日本は、例えばお寿司の巻き物で言うと、かっぱ巻きや納豆巻きなど、「何が巻かれるか」が料理名なのに対して、トルコだと「何で巻くか」が重要なんですかね。中身が何かということはあまり表に出てこないように思えました。
オクラ料理、バーミヤ・イェメイ
最後に紹介するのはオクラを使ったおかずの“バーミヤ・イェメイ”で、「オクラ(Bamya)」+「料理(Yemek)」という名前そのままな料理です。
日本でもオクラはメジャーな食材だし、よく和え物に使われているイメージなので、トルコでも同じような…と思ったら、どうしてこちらも不思議な味。というか、こちらの方が形容し難いかも…?
味付けのベースは、トルコお馴染みのトマト&オリーブオイルなのではないかと思いますが、それ以外に何か甘酸っぱさ要素が隠れているように思えます。
バーミヤ・イェメイのレシピを探していると、まだ熟していないブドウを使用するレシピとかが見つかったので、もしかするとそのあたりのものを使っているのかもしれません。いずれにしても、なんというか、ラタトゥイユ風味を予想していたので完全に裏切られました。良い意味で。
オクラはそもそもアフリカ北東部が原産のようで、その為トルコ語でオクラを表す“バーミヤ(Bamiya)”はアラビア語の“バーミヤー(بَامِيَا)”が由来だそうです
まとめ
今回頼んだものは、ナスの腹裂き(カルヌヤルク)、トルコ風ピラフ、アーティチョークのソテー、ブドウの葉っぱ巻き(ヤプラク・サルマス)、オクラ料理(バーミヤ・イェメイ)でした。
当然ながらとてつもない量なので2人でいただきましたが、これら全部でお値段400リラ(約2,200円)でした。
ここユスキュダル地区はイスタンブールの中でもオシャレなエリアで、映えるカフェを求める若者たちや、潤ってる人々の自宅が密集してそうな、そんな雰囲気ですが、そんなエリアの目抜き通りでいただくランチとしては、まあまあ妥当な金額なのではないでしょうか。(日本だともう数百円くらいはしそうですね)
それにとにかく味は間違いなしでしたし、量も多くてしっかり満腹になるし、イスタンブールのヨーロッパ側で広がる喧噪から逃れる意味でも、フェリーで対岸のユスキュダル地区で散歩がてらランチというのも乙なイスタンブールの楽しみ方ではないでしょうか!
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