中央アジアにおける米料理代表がプロフだとすると、麺料理代表はラグマンですね。
米食文化を自認している我々日本人でも、ラーメンやうどんを始めとする麺食はかなりの市民権を得ていると思いますし、寧ろ米より麺の方を頻繁に食べている方も多いと思います。
かく言う私も子供の頃からラーメンが好きで、ラーメン→中国→ウイグル→ラグマンという王道ルートで中央アジアに出会い、ラグマンが食べたいという動機だけでウズベキスタンまで行ってきました。
そこまでして渡航したウズベキスタンなので、最高の一杯を食べないことには帰れません。
ということで、観光地サマルカンド近くのレストランでラグマンをいただいてきましたので、皆さんがサマルカンドの有名観光地レギスタン広場にお出かけになる際の食事の参考になれば幸いです。
「米料理代表のプロフ」についてはこちらの記事をご覧ください!
そもそもラグマンとは何か?
初っ端から早口でラグマンなるワードを連呼してしまったのですが、そもそもラグマンとはなんぞや?について簡単に説明します。
ラグマンとは中央アジアで広く食べられている麺料理で、身近な料理で例えるならばうどんが一番近いと思います。手延べの麺に、主に羊肉と野菜をトマトベースの味付けでいただく料理で、麺料理ということもあってか、そこはかとなく中華料理的な雰囲気を感じます。それだけに、ラグマンと言ったら中央アジアの中でも中国新疆ウイグル自治区が真っ先に浮かびますね。
この料理名がラグマン→ラグメン→ラーメン(ラーミェン:拉面)と似ている感じがして、まさに中国のラーメン語源を同じくするのでは?と言われたり言われなかったりします。一部ではラーメンの元祖とか、麺料理の元祖とか、なかなかエッジの効いた大胆な説もあるようです。
名称の地域差に関して言うと、ラグマンについてはどの地域でも同じような呼び名のようです。当記事の冒頭で触れたプロフについては、同じ中央アジア内でも地方によって呼び方が複数あることを考えると対象で記ですね。
- ウズベク語:lagʻmon
- カザフ語:лағман
- キルギス語:лагман
- ウイグル語:لەغمەن leghmen
※全て“ラグマン”的な読み方をするようです
ちなみに、、、ウイグル語のلەغمەن leghmenは“レグメン”ではなく“ラグマン”の方が音的に近いらしく、ウイグル語における“エ”っぽい音のアルファベット割当(ラテン文字とアラビア文字)は下記の2パターンあるそうです。
- e, ە ・・・アとエの中間のような音
- é, ې ・・・エに近い音
日本人的には、音とアルファベットの割当が逆の方が分かりやすいのにな~なんて思っちゃいますね
また、イランやアフガニスタン方面で「ラグマン」っぽい名前の麺料理が無さげだったり、古代トルコ系言語では“L”で始まる単語が無いらしかったりするそうなので、ラグマンが中央アジア・ペルシャ文化圏という西発祥というよりは中国のラーメンあたりの東発祥と考えるのが妥当でしょうか…まあこの辺りの起源を私のような素人が解き明かそうとするのは野暮ってものですね。
ラーメンと語源が一緒疑惑のあるラグマンですが、中国では「ラーミェン:拉面」ではなく「バンミェン:拌面」(=汁なし麺)と呼ぶそうです。そこはラーメンじゃないんかいと。
3タイプに分かれるラグマンについて
そんなラグマンですが調理方法にバリエーションがあるようで、麺の上から具材をぶっかけて食べたり、スープに浸かっていたり、具材もろとも炒めたり、調理の自由度が高いようです。油で米を焚くギトギト調理法一択のプロフと違いますね。
日本のうどんに当てはめてみても、餡掛けうどん、かけうどん、焼うどんと、その調理方法にバリエーションがあるので、麺料理の事情は万国共通なのかもしれませんね。炒飯だって読んで字のごとく炒める以外の調理法はありませんし。
そんなラグマンには大きく分けて3通りの調理パターンがあるようなので、それぞれ紹介していきたいと思います。
餡掛けうどんスタイルのラグマン
ラグマンの本場(?)ウイグル料理におけるラグマンは、ぶっかけうどんスタイルというか、混ぜそばのような感じがメジャーのようです。
私は新疆ウイグル自治区に行ったり、中国内のウイグル料理店に行ったりしたことが無いので、本場中国で食べるラグマンというものを知らないのですが、少なくとも都内のウイグル料理店でラグマンをいただいた限りは、いずれも麺のコシが強く食べ応えがあり、大変気に入りました。讃岐うどんとか武蔵野うどんとか、コシが強くて食べ応えのあるタイプのうどんが市民権を得ている日本においては、このタイプのラグマンは好きな人が多いんじゃないかなーと思います。
やはりこの餡掛けスタイルタイプでは製麺後のものを茹でたままで提供されるだけあって、コシの強さがたまらないですね。スープに浸けたり炒めたりといった工程がある他のタイプのラグマンでは味わえない快感です。
2021年に惜しまれながら閉店してしまった、都内最高峰のウイグル料理店でいただいた激ウマコシ強餡掛けラグマン実食記はこちら
ちなみに国内でラグマンが食べたければ、ウイグル料理屋や新疆料理屋のみにとどまらず、蘭州牛肉麺屋でも似たような麺料理をいただけます。蘭州とは新疆ウイグル自治区に隣接する甘粛省の最大都市で、そこの名物料理である牛肉麺自体はラグマンとは全く違う料理なのですが、汁なしタイプの麺料理が置いてあることが多い気がします。やはり近隣同士文化は共有しているんでしょうか。
違う料理なので当然味付けは異なりますが、ウイグル式ラグマンを食べたすぎて禁断症状が出そうであれば是非活用してみてください。こちらも流石中国といったところか、麺にコシがあって美味ですし、最近になって蘭州牛肉麺が都内に爆増中なので意外といろんなところで見つけることができます。
焼うどんスタイルのラグマン
これは読んで字のごとく、ラグマンを具材・調味料とともに炒めた料理です。ウズベク語ではカウルマ・ラグマン(Qovruma Lagʻmon)と呼び、私が現地で食べたものや日本のウズベク料理屋でいただいた限りはスパゲティミートソースのような味付けだったように記憶しています。ラグマンはどのタイプでもベースはトマト味だし具材はお肉なので、炒めればミートソースになることは明白ですね。
ウズベキスタンでいただいた焼きラグマンについてはこちらで記載しています!現地に行かれた際のご参考にどうぞ!
余談ですが、ウズベキスタン滞在中に似たような食堂看板を多数目撃しましたが、私の確認した限りでは焼きラグマンを載せているところはありませんでした。もしかするとウズベキスタンにおいては若干マイナーな料理なのかもしれません。
その代わりと言っては何ですが、“Уйғур Лағмон”=“Uygʻur Lagʻmon”=ウイグルラグマンの文字を掲げる看板はいくつか見つけました。ウズベキスタンでラグマンと言うと、一般的にはスープうどんスタイル(この次の項で紹介)のことを指すので、餡掛けうどんスタイルのものは“ウイグルラグマン”と明確に分けていることが分かります。複数の看板で見かけたことからも、餡掛けスタイルのラグマンはウズベキスタンでも人気だということが分かりますね。
かけうどんスタイルのラグマン
ウズベキスタンで一般的と思われる、トマトベースのスープに浸かったかけうどんスタイルです。ウズベキスタンで食べたものも、日本で食べたものも、パクチーかディル、もしくはその両方がふりかけられていました。
トマトベースのスープに野菜と羊肉というところはウイグル式ラグマンと大きな違いは無さそうですが、ウズベキスタン現地でも、日本国内のウズベク料理屋でも、私が頂いた限りは柔い感じの麺でした。これはスープで煮込んでいるからか、そもそも旧ソ連側の中央アジアでは中国と異なり麺のコシを追求する文化が無かった(もしくは薄れていった)からなのかは謎です。
と言っても物足りないという訳ではなく、ウイグル式ラグマン同様エスニックさと食べやすさが同居した、日本人好みと形容されてもおかしくない料理です。
…ということで、ここから先は本場ウズベキスタンでいただくかけうどんスタイルのスープラグマンについて紹介します!
ウズベキスタンの観光地でコスパ良くラグマンをいただけるレストラン
ウズベキスタンの観光地として一番有名であろう古都サマルカンドのレギスタン広場。
そのレギスタン広場からほど近く、徒歩数分という立地に佇む食堂「シャラフ・ババ・アシハナ(Sharof Bobo Oshxonasi)」でいただきました。
実は後になって気づいたのですが「地球の歩き方・中央アジア編」の2010年代末期版にも載っていました。立地が良かったからかも知れませんが、それだけ優良なレストランであるという証左かと思います。
個人的には、英語メニューが置いてあるような、如何にもな外国人向けのレストランはご遠慮願いたかったのですが、店の外に佇むザ・ウズベク食堂な看板がを見て本場の店に違いないと確信、入店を即決。結論から言えば非常に良かったです。
お店の中は意外と広く中庭テラス風の席があったりして、外塀の内側にまた家があるような、中央アジア式間取り。店の中は(恐らく)現地人と思しき方がいたり、日本人観光客の姿もあったりして、観光客も地元民も両方訪れるような丁度いい雰囲気でした。
ちなみに、お店の人に「ビールいる?」と聞かれたのですが、ウズベキスタンではビールよりウォッカ!というイメージがあるので、流石「地球の歩き方」に載ってるだけあって観光客の扱いに慣れている…と勝手に感心したものでした。
具材がありすぎて麺が見えないウズベク式スープラグマンを食す
店名に“oshxona”(アシハナ=食事処)と書いてあるし、osh(=中央アジア代表的料理のプロフ)を頼んでも良かったのですが、私は前日に別の店でプロフを食べていたため、満を持してラグマンとをチョイス。
“Osh”自体は「食事」を表すウズベク語ですが、同時にプロフのことも指すことがあるようです。
さて、最初にウズベキスタン黄金の3点セットとも言えるお茶、ナン、サラダが自動的に到着することは他の飲食店と同様のムーブ。フランスパンも顔負けのかったいナンをかじりつつ待つこと数分、遂にラグマンが到着しました!
表面にふりかけられた大量のパクチーと大きく鎮座するトウガラシのビジュアルでタイ料理的なモノを連想させますが、実際はトマトベースの優しい味わいで、はっきり言って激ウマ。日本人でも全く抵抗なく食べられる味です。油のせいか何だかこってりしてる雰囲気も感じるのですが、これはこれで濃厚なスープとしてアリ。というか寧ろ必須。何故なら硬すぎるナンを浸して食べる方法が必要だからです。
中には煮込まれまくった角切りの野菜とお肉が割とぎっしり入っていて十分食べ応えあるのですが、ラーメン二郎ばりの天地返しをすると底の方から麺が現れてきます。この麺がまたやわやわでこの野菜たっぷりスープに合っています。
麺のコシが命的なところがあるウイグル式のラグマンと比較すると物足りないと感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、柔めの麺に暖かいスープ効果もあり何だかホッとする味で、中央アジア料理の奥深さを感じること間違いなしです。
価格とまとめ
私がシャラフ・ババ・アシハナに訪れたのは2019年でしたが、当時は400円台前半で下記の料理をいただきました!
- ラグマン
- 羊のシャシリク×2本
- お茶
- パン
- サラダ
「400円台前半」という曖昧な価格表記なのは、正確な金額を失念してしまったからです。(スミマセン)
というのもこのお店、メニューっぽいものはあったのですが食べ物の画像が張り付けられているのみで、肝心の情報が皆無でした。
私の探し方が悪かった可能性が高いのですが、他のお店でもメニューや価格表が置いていないところがあったので、この現象はウズベキスタンあるあるなのかもしれません。
メニューのラインナップは看板でなんとなく分かるのですが、値段が分からないので、手持ちがギリギリの時とか不安にならないんでしょうか?現地の人は注文する前に価格を聞くんでしょうか?(私には分からずでした)
まあ、しょうもないことをつらつらと書きましたが、ラグマンだけでなくシャシリク2本も頼んでこの価格はコスパ良いお店だったと思います。
名も無き地元食堂に比べると値は張るのかも知れませんが、下記の点で、個人旅行者の食事処としておススメだと思いました。
- 観光地から徒歩圏内であること(レギスタン広場から徒歩5分!)
- 観光客の要望を満たしてくれるような王道ウズベク料理を提供していること
- 露骨に観光客向けの雰囲気は感じないこと
以上、参考にしていただけると幸いです!それでは!!!!
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