ウズベキスタン随一、いや、中央アジア随一の歴史地区であるサマルカンドは中世にティムール朝というイスラム王朝の下で大いに栄えたと言います。
その際に建築された歴史的なイスラム建築の建造物は枚挙にいとまがありません。その多くが観光地としてその役割を変えながら、今もサマルカンドの街を彩っています。
さて、サマルカンド、ひいてはウズベキスタンといえば、一般的にはイスラム教国家として理解されることが多いと思います。
確かに歴史的には数々のイスラム王朝がしのぎを削ってきた地であり、文化的にはお隣のペルシャ文化の影響をかなり強く受けている印象がありますが、実はサマルカンド、歴史的に東西文化の中継地であっただけあって、実は非常にダイバーシティな都市なのです。
今回はそんなダイバーシティ都市・サマルカンドでイスラム教以外のスポットを紹介したいと思います!
ユダヤ教
サマルカンドにはかつてまとまったユダヤ人コミュニティがあったそうで、かつては3万人以上の規模だったとか。
時代とともにサマルカンド在住ユダヤ人は少なくなり、一説では現在200人前後しか存在しないようです。
そんな経緯もあってか、サマルカンドにはイスラム教寺院に混ざってユダヤ教の寺院であるシナゴーグがいくつかあります。
そのうちのひとつであるグンバズ・シナゴーグ(英語:Gumbaz Synagogue、ウズベク語:Sinagoga Gumbaz)は老舗のシナゴーグのようです。
サマルカンド随一のイスラム建築群であるシャーヒ・ズィンダ廟群から、住宅街に入って彷徨うこと10分ほどでその姿を拝むことができます。
ガッツリ住宅街ということもあり、ひとりでふらふら歩いていて不審がられないかが一番の不安でしたが、特に何もなく?現地到着。
とはいうものの扉は閉ざされており中の様子は分からず仕舞いでした。
かつて神戸でシナゴーグを見た時にも思ったのですが、教会やモスク、お寺に比べるとシナゴーグは外観的にも特に目立たず、一見さんに対しては積極的に中身を開放しないようなイメージがあります。
※あくまでもイメージです。実際にどうなのかは分かりません。知っている方がいらっしゃいましたら教えてください…
ちなみに、上述のシャーヒ・ズィンダ廟群ですが、同じ敷地内にムスリム墓地があり、その近くにはユダヤ人墓地もあります。
ムスリム墓地が中に入り放題だったのに対し、ユダヤ人墓地はやはり扉が閉ざされており、この点においても厳格さを感じました。
キリスト教・ロシア正教
現在のウズベキスタンにおいて、イスラム教の次に大きな宗教グループは、キリスト教のロシア正教とされています。
ロシア正教は主にサマルカンドに住まうロシア系・ウクライナ系・ベラルーシ系・朝鮮系の方々によって信仰されています。
今回取り上げるのは、サマルカンドの新市街と旧市街の間に位置する聖アレクセイ・ロシア正教会(英語:Church Of St. Alexius Metropolitan Of Moscow、ロシア語:Собор Святителя Алексия Московского)です。
この正教会は1911年に建築され、翌年1912年から活動を開始したようです。
その後、宗教を禁止するソビエト連邦により1920年代に閉鎖され、あの美しいドームと鐘塔は取り壊されてしまったようです。
ソ連時代を通じて軍事関連の施設として使用されていたようですが、ソ連崩壊後の1996年、再度宗教施設として活動できるようになりました。
私も中に入ってみましたが、中にはイコン(宗教画)が複数並ぶ素晴らしい内観でした。
工事中?作業中?だったこともあり内観の写真を撮るのは控えましたが、内観の写真はネット上で確認可能ですのでご興味ある方は是非!
キリスト教・カトリック
イスラム教・ロシア正教の次に勢力を持つのはキリスト教のカトリックです。
カトリックはソ連時代から在住するドイツ系やポーランド系の方々を中心に信仰されているようです。
上述の聖アレクセイ・ロシア正教会にほど近くにある聖ヨハネ・バプテスト教会(英語:St. John the Baptist Church、ロシア語:Церковь святого Иоанна Крестителя)は、イスラム都市・旧ソ連都市として、イスラム教モスクやロシア正教教会が立ち並ぶイメージがあるサマルカンドの中心にありながら、不思議と周囲の風景と調和しています。
当教会はサマルカンド内で唯一のカトリック教会で、1905年に少数派のカトリック教徒が当局に教会の建設許可を求めるものの拒否、その後にポーランド人捕虜が増えるにしたがってカトリック教徒の数が増加したことで遂に1915年に建設、翌1916年に活動を開始したそうです。
その後、1930年に他の宗教施設と同様にソ連当局によって閉鎖、学校として利用されていたようです。
ソ連崩壊後の1999年に晴れて宗教活動の再開に至りました。
現在、ウズベキスタン全体で5000人ほどのカトリック教徒がいるそうですが、イスラム教含む、異教間の関係は良好のようです。流石、ダイバーシティ都市だけはありますね…
ちなみに、私が立ち寄った時には特にイベント等は実施していなかったものの、中に信者と思われる方がいらっしゃったため外から眺めるにとどめました。
キリスト教・アルメニア正教
サマルカンドでロシア正教、カトリックに次ぐ第3のキリスト教勢力としてはアルメニア正教があります。
サマルカンドにおけるアルメニア人の歴史は古く、19世紀末期から少数のアルメニア人が暮らしていたそうです。
その為、かなり古くの1903年に地域のアルメニア人のためにこの教会が設立されました。
このアルメニアの聖母教会(ロシア語:Церковь Святой Богородицы、アルメニア語:Սամարղանդի Սուրբ Աստվածածնի եկեղեցի)も、例によって他のキリスト教教会の近場に位置しています。
その後、1939年にソ連当局によって閉鎖され、農業研究所(協会)の寮として使われることになった後、ソ連崩壊後に地元のアルメニア人・その他有志のコミュニティの尽力によって、1995年にその機能を再開されました。
アルメニア人というと、昔からコーカサスのアルメニア共和国にとどまらず世界中で暮らしているようなイメージがありますが、ここウズベキスタンでも地域社会に溶け込んで今なおコミュニティが存在していることを感じれる場所です。
まとめ:ダイバーシティ都市サマルカンドについて(中華庭園もあるよ)
いかがでしょうか。イスラム都市として栄えたサマルカンドで、イスラム教以外の文化を感じることができるスポットについて紹介してみました。
ステレオタイプなサマルカンドはモスクとイスラム教徒しかいないと思われがちな気がしますが、実は東西文化の交易点として多様な文化・宗教を受け入れてきた、ダイバーシティな都市としての側面があります。
サマルカンドに訪れたら、最初は溢れんばかりのモスクに圧倒されるのも良いと思いますが、それらに食傷気味(?)になったら、是非とも他文化に触れてみるのもいかがでしょうか!
ちなみに、サマルカンドの市街地を歩いていたら中華風の公園を発見しました。
当時あまり時間が無かったので中に立ち寄ることは無かったのですが、あの公園は何かの友好の証なのでしょうか…
それでは!!!!!!
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